Rosso

音楽聴いて想像して書く暇つぶし。 あくまであたしのイメージのお話。

イエローパンジーストリート

この調子だと彼女が現れるのは一時間半後だな。2時間前からいるファストフード店で煙草の煙を吐き出しながらどうやって時間を潰そうか考える。
店に入る前に買った小説は読み終わってしまったし、新宿は歩き回っても面白い街ではない。
便利だけど無機質でつまらない街。一度知ってしまえばそれっきりの街。昨日までいた西の街は整っているようでごたごたしていて、何度歩いても楽しいのに。
iPodから流れる音楽をアイドルから最近流行りのバンドに変える。最近こればっかだなぁ、十年ぶりにハマったアイドルの曲は耳に優しいけれど時々退屈だ。
そんなことを考えてたらあと一時間で着くという彼女からのメールにここから出ることをやめ、迷惑な客になる決意をしてまた煙草に火を付ける。
学生時代から新宿で時間を潰す時はいつもここのファストフード店に来る。別段居心地が言い訳でもないし、他の同じチェーンよりも少し値段が上がるこの店になぜいつも来るのか自分でもよくわからないけれど。
先にタワーレコードにでも行っておくべきだったな。夜行バスで寝不足の体はもう駅の反対側まで動き回る気力もない。眠いなあ。なんて思いながら氷ばかりになってしまったアイスティーをすすり、ここに毎日のように通ってた頃を思い出す。毎晩昼から22時近くまで働いて、タワーレコードに寄って最終の準特急で帰る。いくら食べても体重がガンガン落ちていくくらいしんどくて結局やめてしまったけれど、とても楽しくてキラキラしてた半年だった。
あのままやめずにいたら、今どんな生活だったろう?もっと近くにいたら今のこの関係も変わったかな、なんて少し後悔もしてみる。付かず離れずの居心地はいいけれど、これ以上近づくことのない関係。お互いに図りかねる距離に時々突き放す癖に久々に会うとべったりなずるい距離。
誰にも相談しないし、言わない。ずるいけれど、居心地がいいから。きっとこんなにフィーリングが合う人は他にいない、だからと言ってこれ以上どうしたいとも思わないから誰にも言わない。
ほんとにずるいな、自分。なんてほとほと呆れ返った頃に彼女からの着信。きっと彼女は私たちのことにはなにも言わない、聞いて来ない。こんなにそのことで頭がいっぱいになっても知らん顔して近況報告しながらくだらない話に花を咲かすんだ。

カレンダー ガール


何が悪いんだよ、意味わかんねぇ。

わたしの前で頭を抱えているこの男はまた振られたらしい。
なんで私は毎回毎回この男の別れ話と愚痴を聞かされなきゃいけないのだろうか。
いい加減聞き飽きましたよ、お兄さん。

何なんだよ、アイツが好きだって言ってきたくせに。

そんなこといいながらも単純なこの目の前にいる男が、彼女にハマりまくっていたのも私は知っている。好きだって言われたらその気になってしまう、お目出度い男なのだ。

大体カレンダーになりたいって何だよ、物じゃねぇかよ。

その話何度目でしょうか?
彼女が、カレンダーになりたい。毎日見てもらえるから、羨ましい。って言った話でしょ?

その発想に私はいたく感心したし共感したんだよな、なんてこんな馬鹿に話しても通じないよなぁ…なんてレモネードを飲みながら幹線道路を眺める。
大体、いつもいつも私のところへやって来てはこんな話をしていくけれど、果たしてこの人は私の気持ちなんて考えたことあるんだろうか?
目の前で好きな人に他の女の子の話をされる私の気持ちを…!
そもそも私がこの人のことを好きだなんて知る由も無いだろうけど。

お前さ、さっきから黙ってっけど聞いてんの?

聞いてるよ、うん。
……とりあえずさぁ、あの子ににげられちゃったならヒマでしょ?しばらくあの子とカレンダーの代わりに私のこと見ててみない?そうそう簡単には飛んで行ったりしないけど?

…なんてね!冗談。

ほら、馬鹿だからわかってない、ポカーンってしてる。きっとこの人には一生理解できないんだろうな、こんな気持ちは。そして当分私の想いも伝わらないな。

…結構勇気出していってみたんだけどなぁ。まぁ、いっか。
ゆっくりゆっくり、伝えていけば。ね。

東京ループ

 

この街に来て4年

私は一旦ここを去る。

夢を捨てるつもりはないし、また帰ってくるつもり。

都会に出て来たあの頃

あたしの未来は輝いていて

夢だってなんだって叶う気しかしなかった。

希望とかそんな明るいものしか見えなかった。

いったいどこで間違ったかな?

どこで妥協して、どこで負けたのかな?

なんでこの街に来たのかな?

そんなのは簡単だ。

大学でだって勉強するつもりなんてなかった

兎に角、夢に近づくためだけだった。

大事なものが出来過ぎて

それを守ることにいっぱいいっぱいで

夢を忘れかけていた。

今は一休み。

回り道も必要だ。

間違っちゃいないよね。

最後の日、東京の景色はあたしに問いかける。

なんでこの街に来たのかな?

なにを夢見てきたのかな?

答えなんかはわかってる。

今は涙に滲んだ目でその景色を見つめるだけしかできないけれど。

ハイライト

 

拝啓、もう会うことのないあなた

あの日の話、もう7ヶ月も前の話

あれ以来あたしは恋ができません

仕事中、駅の中、似た人を見るとふっと振り返ってしまいます

あの日の別れ話

ひどいことを言いました

辛かったんです、怖かったんです

今でも手をつないだ道を歩くたび

二人で行った場所を通るたび

思い出します、あなたのことを

あの日々があるから

過去があるから今のあたしがいるなんて

粋がって言っても

まだ過去を愛せるほど成長してません

でもあなたを好きになったこと

後悔はしてません

あの日々だって後悔してないよ

強がりとかじゃなくって、本当に

あたしは今を歩きます

前を向いて生きてるつもりだよ

でもね、都合のいい話だけど

今はあなたに会いたいです

ごめんね、くらいは言いたいんだ

ただそれだけ。

キラキラ!


「さようなら」もうこれで当分会わない。
どんどん遠くなっていくあの人を眺めていた。
もう帰ろう、1人歩き出しふと空を見上げると光る飛行機のライトが綺麗だ。あぁ、さよならする前に見たかった、一緒に最後に見たかったなぁなんてチクリ。あたしの心に刺さる、イタイなぁ。

何をしてても楽しそうで輝いてるあの人が好きだった。いや、今も。
どんな時も自分の思ったことを曲げない姿がカッコよかった。
でもそれが、そのかっこよさが引き金だった。
優しささえもナイフみたいで、自分を曲げれないが故にこうなったって。あたしを傷つけまいと言ってたことのウソもホントは気づいてたんだよ。もうあたしを見ていないのなんてわかってた。
だって知ってるんだもの。何かに夢中になった時、惚れこんだ時のあの人のこと。
なんだかんだでいつもその姿を目で追ってたんだなぁ…今更気づいて笑ながら涙が出る。

いつかそのうちまた逢えたら、その時はあたしももっと輝いていたいな。
大好きだったあの人に負けないくらい。どんなことがあっても。
そしてあの人にも輝いていて欲しいな。いつか笑って会えるその日まで。
ずっとキラキラ輝いていてね。なんて届かない想いを胸に留めて歩く夜道。
今日だけは泣いちゃうけれど、明日からは輝けるように、大好きな曲を口ずさんで帰ろう。
明日からはハレルヤ!エブリデイ

Melodic Storm

静かに風が吹いた。
彼は私の隣でギターを弾いている。
休日のベランダで、タバコをふかしながら。
6月の真ん中にしては珍しくとてもいい天気で
私達は昼間からビールを飲んでいる。

その曲なんかいいね、と私は言う。
どうやら彼が昔から好きなアーティストの曲らしい。
初めて弾いた曲なんだと笑いながら彼はメロディを口ずさむ。
私はそれを聴きながら足を浸すバケツの水を静かに揺らしていた。

なぁ、と彼はギターを手にしたまま私に話しかける。
例えばどんなに考えても言葉にし尽くせないものってあるだろう?
彼の方向いて聞くと、前を向いたまま彼は続ける。
俺の頭の中はそんなもんばっかりだからさ、あんまりうまくは言えないけどさ
なんつーか、こーゆー時間が続けばいいよな。
そう言ってまたさっきの曲を弾きながら口ずさむ。

どうしたの?急にそんなこと、めずらしい。茶化して言うと、
いや、なんかさ、久々にこの曲を口にしたらなんかそんなことを思ったんだよな。なんていいながら笑う彼に
もう一回それ弾いて?ちゃんと聴きたい。と頼んだ。

言葉にできない思いが奏でる
拙いメロディに伝うストーリー
窓に射す光る影の色が
瞬く度に変わるように

今度この曲のCD実家から持ってくるよ。すげーいい曲なんだよ。と嬉しそうに話す彼に
うん、いい曲だねと答えながら
こんな日々が続くことを
この人とずっと手を繋いでいられることを
密かに願って、ぬるくなったビールを一口飲んだ。

マシマロ


漫画を買った。好きな作家の短編集。
そこに出てくるのは完璧なダメ男。
ヒゲは伸びっぱだし、時間にはルーズだし
おまけに服の前後ろ逆だったりするし。
なんてったっていつもヘラヘラ笑ってる。
怒られてもなんでも、とにかくヘラヘラ笑ってる。

でもその漫画がいたく気に入って買ってしまった。
なんでかな?彼にそっくりだった。
本当にダメダメなあたしの彼にソックリなんだ。
あたしが怒っててもいつもニヘラニヘラしてて
文句言っても「わかった、わかった。」
無茶苦茶なワガママ言ってみてもいつも笑って受け入れてくれてしまう。
そんなトコロが大好きだけど大キライなのだ。
いつもいつも笑ってて、お前には自分ってもんがないのか!!って。

さっきだってそう。
あたしが無茶苦茶言ったのに
笑ってる彼に腹が立って、家を飛び出した。
勢いよく飛び出したのはいいのだけれど
行くあてもないから近所の
本を売るなら…♪の中古書店で立ち読みすることにした。
そしたらそんな漫画に出会ったのだ。
本当に出てくる男が彼にソックリすぎて、
たった2ページの話なのに、
そのまま彼な気がして、ハッとしたんだ。
ワガママで、気の短くて、気まぐれなあたしを
受け入れてくれるのなんて彼くらいしかいないのに、
そんなトコロが嫌!なんて家を飛び出したあたしは
なんてバカなんだろう?
本当にダメダメなのはあたしじゃないか。
いつもあたしを受け入れてくれる彼を、
理解してくれる彼を
わかってないあたしが一番ダメダメじゃないか。
そんなことに気づいたら、なんだか涙が出てきた。
急いで帰らなくっちゃ。
帰って伝えよう、いつもありがとうって。
そんな気持ちになったのだ。

さぁ、彼の好きなマシマロを買って帰ろう。
どーしたの?お前マシマロすきじゃないじゃん?なんて言うだろーけど、
まぁいいじゃんで済ましてやろう。彼みたいに笑いながら。
飛び出したこと怒ってるかな?
いや、でもいつもみたいにヘラヘラ笑いながら
「おかえり」なんて言うんだろうな。