Rosso

音楽聴いて想像して書く暇つぶし。 あくまであたしのイメージのお話。

世界のエンドロール


世界じゅうのニセモノをかき集めて部屋のなかで大声で叫ぶ夢を見た。
今日でおしまいだってさ。

民意よりも保身が大事な政治家たちはそそくさと逃げたらしい。

一体どこに?今日で世界は終わるらしい。

イヤホンからは爆音でロックンロールが流れる。
国道をデッカいバイクに乗った兄ちゃんが飛ばす。
そうは言っても街は普通に動いている。

もし本当に世界が終わるなら
その朝焼けから夕焼けから夜空からすべてをこの目におさめておこうと私は思った。
今まで歩いた馴染みの道も大好きだった彼と行った場所も
すべてこの目におさめておこうと思って家を出た。

いろいろめぐって最後にたどり着いた渋谷の電気屋のTVでは
途切れることなく世界の終わりを嘆くキャスターとコメンテーター。
バラエティはやってないのか、ゴールデンタイムだっていうのに。

いっそのことその根拠を教えてくれよ。
そんなことをつぶやきながら彼は目の前に立っていた。
そして私に振りかえって「ねぇ?」と同意を求める。
私は「はぁ。」と答える。彼は構わずそのまま喋り続けている。きっと返事なんて聞いていない。
正直理由も根拠もどーだっていいじゃないか、世界が終わるなら。そんなことを思いながら彼の話を聞き流す。

「とりあえず」私は言った。「ヒマなら一緒に歩いてみません?」なんでそんなことを言ったのかはわからない。世界の終わりを1人でいるのはさみしいと思ったのか、それともこんな時に男と女がセットになるのは人間の本能なんだろうか?
とりあえず返事を待たずにその場を去ろうとしたら
彼は何事もなかったように、旧知の友人のように隣に立って歩きだした。

何も話すことなくどれだけ歩いたか。
夜はとっくに更けて、去って、空が白み始めた。
なんだ、また朝がきたじゃない。
都会の小さな公園で名も知らない彼の手を握ったまま私は言った。
そうですね。
初めてまともにかわした会話に少しほっとしながら
朝焼けの空を眺め、そして私は目を閉じた。