Rosso

音楽聴いて想像して書く暇つぶし。 あくまであたしのイメージのお話。

Melodic Storm

静かに風が吹いた。
彼は私の隣でギターを弾いている。
休日のベランダで、タバコをふかしながら。
6月の真ん中にしては珍しくとてもいい天気で
私達は昼間からビールを飲んでいる。

その曲なんかいいね、と私は言う。
どうやら彼が昔から好きなアーティストの曲らしい。
初めて弾いた曲なんだと笑いながら彼はメロディを口ずさむ。
私はそれを聴きながら足を浸すバケツの水を静かに揺らしていた。

なぁ、と彼はギターを手にしたまま私に話しかける。
例えばどんなに考えても言葉にし尽くせないものってあるだろう?
彼の方向いて聞くと、前を向いたまま彼は続ける。
俺の頭の中はそんなもんばっかりだからさ、あんまりうまくは言えないけどさ
なんつーか、こーゆー時間が続けばいいよな。
そう言ってまたさっきの曲を弾きながら口ずさむ。

どうしたの?急にそんなこと、めずらしい。茶化して言うと、
いや、なんかさ、久々にこの曲を口にしたらなんかそんなことを思ったんだよな。なんていいながら笑う彼に
もう一回それ弾いて?ちゃんと聴きたい。と頼んだ。

言葉にできない思いが奏でる
拙いメロディに伝うストーリー
窓に射す光る影の色が
瞬く度に変わるように

今度この曲のCD実家から持ってくるよ。すげーいい曲なんだよ。と嬉しそうに話す彼に
うん、いい曲だねと答えながら
こんな日々が続くことを
この人とずっと手を繋いでいられることを
密かに願って、ぬるくなったビールを一口飲んだ。