発光体
赤いフロアにはほとんどひとがいない
ここは高円寺のハコ。地下にある。
赤と黒の溶けたような空間で
アルコール片手にライブを見てる。
何がしたいのかわからないけれど
ステージの上の彼らは狂っている。
バスドラがだんだん加速していく
それに乗せてベースの粒も増えてって
ギターの音は歪んで加速して訳がわからない。
どんどん加速していくリズムに合わせて
体を揺らしながら、赤く照らされたアルコールを飲み干す。
だんだんあたしまで訳がわからなくなってくる
楽しいのかな…うん、たのしいや。
お兄さんビール頂戴。
なぜか手にしたのはブラッディマリー
なんか血みたい。気持ち悪いわ。
まぁいっか。だいぶ頭がやられてきてる。大抵のことがどうでもよくなる。
ステージの上の彼らは馬鹿だろ?なんて叫んでる。
気持ち悪い声で。赤い照明がぴったりだ。
あたしがその赤になりたいなんて。
いよいよ本当に訳のわからないことを考えてる
あたしは彼ら以上の馬鹿だ。
まどろむ意識の中でトイレの壁の絵が浮かぶ。
Kissする男女の下に描かれたMake Love
きっと今日も酔い潰れたあたしはあの中の誰かと
そこでそんな行為に及ぶんだななんて思いながら
片手の血みたいな酒を飲み干した。